公開日:2026年9月9日|執筆・監修:石川 翔(柔道整復師・はり師・きゅう師/和歌の浦翔鍼灸接骨院 院長)
こんにちは。和歌山市和歌浦の和歌の浦翔鍼灸接骨院です。
「口が大きく開かない」「あくびをすると顎が痛い」「口を開けるとカクッと音がする」。顎関節症は20代から40代の女性に多く、放っておくと食事や会話のたびに気になる症状です。
この記事では、顎関節症について今の医学で分かっていることと、まだ分かっていないことを、日本顎関節学会のガイドラインに沿って正直に書きます。そのうえで、接骨院・鍼灸院がどこまで関われるのかも明確にします。結論から言えば、顎関節症の中心は歯科・口腔外科です。当院は、その周りの筋肉と首の緊張に対して補助的に関わる立場です。
【この記事の結論】
1. 顎関節症の診断と中心的な治療は、歯科・口腔外科の役割です。まずそちらの受診をおすすめします。
2. ガイドラインで提案されているのは「自分で行う開口訓練」と「スタビリゼーション型スプリント」ですが、いずれも弱い推奨で、根拠の確実性は「非常に低い」と書かれています。
3. 咬合調整(歯を削る)は推奨されていません。比較試験の論文が存在しないためです。元に戻せない処置なので、すすめられたときは理由を確認してください。
4. 日中に上下の歯が触れ続けている癖(TCH)を減らすことは、自分で今日から始められます。
5. 3か月ほど続けても改善しない場合は、専門医への紹介がすすめられています。
1. 顎関節症の3つの症状と、主な病態

図1|顎関節症の3つの症状と、主な病態
口が開くかどうかの目安は、自分の指を縦にして3本入るかです。入らない場合は開口障害があると考えます。
同じ「顎が痛い」でも、痛んでいるのが筋肉か関節か、関節の中の円板がずれているのかで対応が変わります。当院が関われるのは、主に咀嚼筋痛障害(顎を動かす筋肉の痛み)の部分です。
2. 今日からできること・やめたほうがよいこと
まず取り組んでいただきたいのが、TCH(歯列接触癖)の是正です。本来、上下の歯が触れているのは食事や飲み込みのときだけで、1日に合計20分程度といわれています。ところが、集中しているときやストレスがかかっているときに、無意識に軽く噛み続けている方がいます。
力を入れて食いしばっていなくても、触れているだけで顎の筋肉は休めません。パソコンやスマートフォンの近くに小さな付箋を貼り、目に入るたびに「歯を離す」ことを確認する方法が続けやすいです。

図2|今日からできること・やめたほうがよいこと
正しい安静位は、唇は閉じる/歯は少し離す/舌は上あごにつけるです。この状態が一日の大半を占めるようになると、顎の筋肉が休める時間が増えます。
3. ガイドラインが示している推奨の強さ
ここは、書きにくいけれど大事な部分です。日本顎関節学会の初期治療診療ガイドライン(2023改訂版)は、次のように示しています。

図3|ガイドラインが示している推奨の強さ
提案されている開口訓練とスプリントも、「弱い推奨」で、エビデンスの確実性は「非常に低い」と明記されています。つまり、「これをすれば必ず良くなる」と言い切れる方法は、顎関節症についてはまだ確立していません。
マッサージや鎮痛薬は「推奨なし」とされています。これは「効かない」という意味ではなく、「判断できるだけの根拠がない」という意味です。当院が行う手技も、この位置づけの中にあります。
一方で、咬合調整(歯を削って噛み合わせを変えること)は推奨されていません。比較試験の論文が存在しないためです。削った歯は戻せません。すすめられたときは、なぜ必要なのかを必ず確認してください。
4. どこに相談すればよいのか

図4|どこに相談すればよいのか
顎関節症は、診断も、スプリントの作成も、歯科・口腔外科の領域です。当院にお越しいただいた場合も、まだ歯科を受診されていない方には受診をおすすめします。当院で行うのは、その周りの筋肉と首の緊張に対する部分です。
5. 当院での対応

図5|当院での対応(顎関節症)
顎を動かす筋肉(咬筋・側頭筋・内側翼突筋など)は、首の筋肉と連動しています。頭が前に出た姿勢が続いている方は、顎を引く位置がずれ、顎まわりの筋肉が余計に働いていることがあります。そのため当院では、顎だけでなく首と肩から見ていきます。
施術には手技のほか、鍼灸と超音波の物理療法を使うことがあります。顎の関節そのものを動かす処置(関節の中の円板を戻すような操作)は行いません。これは歯科・口腔外科の領域です。
当院での症例をご紹介した記事もあります。あくまで一例で、同じ結果をお約束するものではありません。
【症例報告】口が開かない・顎が痛い「顎関節症」への施術 >
実際にお寄せいただいたお声
「顎関節症の痛みで口が開けられず、ご飯を食べるのもつらい状態だったため受診しました。超音波や電気による施術に加え、マッサージも丁寧にしていただき、少しずつ口が開くようになり、痛みも改善しました。食事もしやすくなって本当に助かりました。」
— さくらんぼ 様
※Googleクチコミより引用(長い投稿は一部を抜粋)。個人の体験であり、同じ結果をお約束するものではありません。効果の程度や期間には個人差があります。
6. 正直にお伝えします
◎ はっきりしていること
・ガイドラインでは、自分で行う開口訓練とスタビリゼーション型スプリントが提案されています。
・咬合調整(歯を削ること)は推奨されていません。元に戻せない処置です。
・3か月程度続けても改善しない場合、専門医への紹介がすすめられています。
△ 注意して読んでいただきたいこと
・提案されている方法も含めて、顎関節症の治療は根拠の確実性が「非常に低い」とされています。「必ず治る」と言える方法は、まだありません。
・当院が行う手技についても、ガイドライン上は「推奨なし(根拠が非常に弱い)」の位置づけです。効果を大きく約束することはできません。
・「顎のゆがみが全身の不調の原因」という説明には根拠がありません。
・顎関節症に、接骨院の柔道整復として健康保険を使うことはできません。原因のはっきりした急性のケガではないためです。
・症例としてご紹介している改善例は個人の経過であり、同じ結果をお約束するものではありません。
首や肩のこりと一緒に顎がつらい方は、一度ご相談ください。
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7. よくあるご質問
Q. 顎関節症は自然に治りますか。
A. 軽いものは、癖を直して顎を休ませることで落ち着いていく方がいます。一方で、長く続く方もいます。3か月ほど様子をみても変わらない場合は、専門医への相談がすすめられています。
Q. 音が鳴るだけで痛みはありません。治療は必要ですか。
A. 音だけで、痛みも開口障害もなく、日常生活に支障がなければ、すぐに治療が必要とは限りません。気になる場合は、まず歯科でご相談ください。
Q. マウスピース(スプリント)は作ったほうがよいですか。
A. ガイドラインでは提案されている方法のひとつです。作成は歯科の領域ですので、歯科でご相談ください。当院で作ることはできません。
Q. 接骨院で健康保険は使えますか。
A. 顎関節症について、接骨院の柔道整復で健康保険を使うことはできません。自費でのご案内になります。金額は初回に必ずご説明します。
Q. 鍼は顎にも打つのですか。
A. こめかみや頬など、顎を動かす筋肉に対して使うことがあります。苦手な方には刺さない鍼や、手技のみの対応もできます。無理におすすめすることはありません。
Q. 歯ぎしりも関係しますか。
A. 関係することがあります。ただし睡眠中の歯ぎしりは自分では止められないため、歯科でスプリントを含めてご相談いただくのが基本です。当院で扱うのは、日中の食いしばりや歯が触れ続けている癖(TCH)の部分です。
Q. 何回くらい通えばよいですか。
A. 症状と経過によって変わります。初回の評価のあとに見通しをお伝えします。通院回数を必要以上に増やすご提案はしません。
まとめ
・顎関節症の診断と中心的な治療は、歯科・口腔外科の役割。
・ガイドラインで提案されるのは開口訓練とスプリント。ただしいずれも弱い推奨で、根拠の確実性は非常に低い。
・咬合調整(歯を削る)は推奨されていない。元に戻せないので慎重に。
・日中のTCH(歯が触れ続ける癖)を減らすことは、今日から自分でできる。
・当院が関わるのは、顎を動かす筋肉と首・肩の緊張。歯科と役割を分けています。
参考文献
1. 一般社団法人日本顎関節学会 診療ガイドライン委員会編.『顎関節症初期治療診療ガイドライン2023改訂版』
2. Koh H, Robinson PG. Occlusal adjustment for treating and preventing temporomandibular joint disorders. Cochrane Database of Systematic Reviews. Art. No.: CD003812.
3. Vickers AJ, Cronin AM, Maschino AC, et al. Acupuncture for chronic pain: individual patient data meta-analysis. Archives of Internal Medicine. 2012;172(19):1444-1453.
4. 厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費の支給基準」
執筆・監修 石川 翔(いしかわ しょう)
和歌の浦翔鍼灸接骨院 院長/Titanium Fitness Gym 代表トレーナー
・柔道整復師(国家資格)/はり師・きゅう師(国家資格)
・3年制の医療系養成校を2校修了。柔道整復師は学年首席で卒業
・バスケットボールチーム「ONELYS wakayama(ワンリーズ和歌山)」チームトレーナー(Bリーグ入りを目指すSB1リーグ所属/ジム・接骨院としてオフィシャルパートナー契約)
・プロゴルファー 濱田茉優 選手 ツアートレーナー
和歌の浦翔鍼灸接骨院
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療の指示ではありません。当院は医療機関ではなく、柔道整復・はり・きゅうの施術所です。顎関節症の診断と中心的な治療は歯科・口腔外科が行います。口が急に開かなくなった、顔が腫れている、しびれがあるなどの場合は、まず歯科・口腔外科または医療機関を受診してください。