はじめにお読みください
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。強い痛みで歩けない、力が入らない、大きな内出血があるなどの場合は、まず医療機関を受診してください。回復の経過や感じ方には個人差があります。
公開日:2026年8月17日 | 執筆:石川 翔(柔道整復師・鍼灸師/和歌の浦 翔鍼灸接骨院 院長)
こんにちは。和歌山市和歌浦の「和歌の浦 翔鍼灸接骨院」院長の石川です。
走っていて、もも裏に「ブチッ」という感覚。あるいは急に力が抜けて走れなくなった。
ハムストリングスの肉離れは、スポーツの現場でもっとも多いケガのひとつです。そしてもっとも再発しやすいケガでもあります。
この記事では、痛めた直後にすべきこと、やってはいけないこと、そして再発させないための進め方をお伝えします。
この記事の結論
✔ 冷やし続けるより、痛みの範囲で早めに動かすほうが回復が早いと考えられています
✔ 痛めた場所によって、復帰までの日数が2倍以上変わります
✔ 伸ばしながら鍛えるリハビリのほうが、復帰が早いという研究があります
✔ 復帰の判断は「何日たったか」ではなく「何ができるか」で行います
目次
1. まず、痛めた直後にすること
最初の数日の過ごし方で、その後の経過が変わります。
図1|近年は「冷やして安静」から「守りながら、動かせる範囲で動かす」へと考え方が変わってきています。
かつてはRICE(安静・冷却・圧迫・挙上)が常識でした。ですが現在は、より新しい考え方が国際的なスポーツ医学の場で示されています。
2020年に発表されたPEACE & LOVEという考え方です(Dubois & Esculier)。ポイントを日本語で整理すると、次のようになります。
最初の数日(守る期間)
■ 1〜3日は無理に動かさない|出血と組織の損傷が広がるのを防ぎます。ただし長すぎる安静は逆効果です
■ 心臓より高くして休む|腫れを引かせます
■ 弾性包帯などで軽く圧迫する|内出血と腫れを抑えます
■ 何が起きているかを理解する|不安なまま過ごすと、回復が遅れることが分かっています
数日後から(動かす期間)
■ 痛みの範囲で早めに動かす|組織の修復を促します
■ 前向きな気持ちを保つ|心理面が回復に影響します
■ 血流を保つ|痛くない範囲での軽い運動を早めに
■ 段階的に運動へ|これが再発を減らします
2. なぜ「冷やし続ける」がすすめられなくなったのか
炎症は、治るために必要な過程だからです。
意外に思われるかもしれません。
痛めた直後の腫れや熱感は、体が組織を修復しようとして起こしている反応です。ここを強く抑え込みすぎると、修復そのものが遅れる可能性が指摘されています。
このため、消炎鎮痛薬の常用や、長時間の冷却は推奨されなくなりました。
誤解のないように
「冷やしてはいけない」という意味ではありません。ケガの直後、痛みが強い時間帯に短時間冷やすことには意味があります。
問題は何日も冷やし続けることと、痛み止めで痛みを消したまま動いてしまうことです。痛みは「今どこまで動かしていいか」を教えてくれる大事な信号です。
また、痛み止めの服用については処方した医師・薬剤師の指示が優先されます。自己判断で中止しないでください。
3. どこを痛めたかで、復帰までの日数が変わる
同じ「もも裏の肉離れ」でも、2つのタイプがあります。
図2|走っていて痛めるのはももの真ん中あたり。開脚などで痛めるのは、お尻に近い上のほうです。
① 走っていて痛めたタイプ
全力疾走中、脚を前に振り出した瞬間に起こります。痛むのは、ももの真ん中あたり。急に力が抜けて走れなくなるのが特徴です。
② 伸ばして痛めたタイプ
開脚やハイキック、前後に大きく開く動作で起こります。痛むのは、お尻に近い上のほう。最初の痛みは軽いことも多いのですが、こちらのほうが厄介です。
図3|お尻に近い付着部を痛めた場合、復帰までの期間が大きく延びます。同じリハビリを行った場合の比較です。
スウェーデンの陸上選手を対象とした研究では、お尻に近い付着部を痛めた場合、復帰までの日数が2倍以上長くなったと報告されています(Askling ら, 2014年)。
最初の痛みが軽くても、油断できないのがこのタイプです。だからこそ、どこを痛めたのかを最初に見極めることが大切になります。
4. 医療機関を受診したほうがよいサイン
次のような場合は、まず医療機関で状態を確認してください。
こんなときは受診を
■ まったく歩けない、体重をかけられない
■ もも裏に大きな内出血(青あざ)が広がっている
■ 押すと大きなくぼみや段差を触れる
■ 座ると座骨のあたりが強く痛む
■ しびれや、脚に力が入らない感じがある
■ 過去に同じ場所を何度も痛めている
私たち接骨院は筋肉や関節の専門家ですが、MRIなどの画像検査を行うことはできません。腱が切れている、骨から剥がれているといった状態は、画像でなければ判断できないことがあります。
遠回りに見えて、これが結果的に最短ルートになります。
5. 当院で行うこと
痛みを取ることと、動ける状態に戻すこと。この2つを並行して進めます。
① 状態の評価
どのタイプか、どのくらいの範囲か、どの動きで痛むか。まずここを確認します。触診に加えて、股関節や体幹の動きも見ます。もも裏だけの問題で終わらないことが多いためです。
② 物理療法・鍼灸
超音波療法(伊藤超短波 EU-910/LIPUS)を用い、深部への刺激と血流の改善を図ります。手技だけでは届きにくい層に対して、鍼治療を組み合わせることもあります。
③ 動かす範囲の設計
ここがいちばん大事な部分です。いつ・どこまで動かしてよいかを、状態を見ながら決めていきます。早すぎれば再断裂、遅すぎれば回復の遅れ。この線引きが専門家の仕事です。
④ 段階的なトレーニングへ
痛みが落ち着いてきたら、次の章のリハビリへ進みます。当院は併設のパーソナルジムと連携しているため、施術からトレーニングまで同じ場所で完結できます。
※症状の経過や感じ方には個人差があります。すべての方に同じ結果をお約束するものではありません。
6. 伸ばしながら鍛える|Lプロトコル
「痛くない範囲で伸ばしながら鍛える」ほうが、復帰が早いという研究があります。
肉離れのリハビリには、大きく2つの考え方があります。
ひとつは、筋肉の中間の長さで鍛える従来型。もうひとつが、伸ばされた状態で鍛える方法です。
この2つを比べた研究があります。
◎ ここは、はっきりしています
スウェーデンのサッカー選手75名を、2つのリハビリ方法にランダムに振り分けて比較した研究です(Askling ら, 2013年)。
結果、伸ばしながら鍛えたグループは平均28日で復帰。従来型は平均51日でした。再発が増えることもありませんでした。
陸上選手を対象とした別の研究でも、同じ傾向が確認されています。
この方法は「Lプロトコル」と呼ばれ、3つの種目で構成されています。
図4|いずれも、もも裏が伸ばされた状態で力を発揮する種目です。痛みが出る手前で止めるのが鉄則です。
■ エクステンダー|仰向けで股関節を曲げたまま、膝をゆっくり伸ばしていきます
■ ダイバー|片脚立ちから、上体を前へ倒します。後ろ脚は伸ばしたまま
■ グライダー|片脚を前に残したまま、体を後ろへすべらせます
自己判断で始めないでください
この3種目は、痛みが出る手前で止めることが前提です。どこで止めるかの判断を誤ると、かえって悪化させます。
また、開始できる時期は状態によって異なります。必ず専門家の評価を受けたうえで、指導のもとで行ってください。
7. 復帰までの4段階
日数ではなく、できることを基準に進めます。
図5|「2週間たったから走る」ではなく、「この動きが痛みなくできたから次へ」と進めます。
■ 第1段階(急性期)|守りながら、痛くない範囲で血流を保ちます
■ 第2段階(回復期)|Lプロトコルなど、伸ばしながら鍛える種目へ
■ 第3段階(走行期)|ジョギングから始め、少しずつスピードを上げていきます
■ 第4段階(復帰期)|全力疾走と、競技特有の動きを確認して復帰
復帰の判断で見ていること
✔ 左右差なく、痛みなく全力疾走ができるか
✔ 急な方向転換や減速で不安がないか
✔ もも裏の力が、反対側と同じくらい出せるか
✔ 本人が「大丈夫だ」と思えているか(心理的な準備)
最後の項目を軽く見ないでください。「まだ怖い」という感覚が残ったまま復帰すると、再発率が上がることが知られています。
8. 再発しやすいケガです
ここを知らずに復帰すると、同じことを繰り返します。
図6|再発の多くは、復帰から間もない時期に起こります。「治った」と感じた直後が、いちばん危ない時期です。
ハムストリングスの肉離れは、スポーツ外傷のなかでも再発率がとくに高いことで知られています。報告によって幅がありますが、1年以内に3割近くが再発するというデータもあります。
そして再発の多くは、復帰してから間もない時期に集中します。
なぜか。痛みが消えることと、組織が治りきることは別だからです。痛みは比較的早く消えますが、筋肉が元の強さを取り戻すには、それより時間がかかります。
再発を減らすために
✔ 痛みが消えても、リハビリを途中でやめない
✔ 復帰後もトレーニングを継続する(ここが最も抜けやすい)
✔ 疲労がたまった状態で全力疾走をしない
✔ 同じ場所を繰り返し痛めている場合は、原因を体全体から見直す
9. 復帰後も続けたいトレーニング
復帰がゴールではありません。ここからが再発予防です。
もも裏のケガ予防としてもっとも根拠が示されているのが、ノルディックハムストリングという種目です。
膝立ちから、体をゆっくり前に倒していく運動です。8,459名を対象とした15研究の分析では、この種目を含む予防プログラムでもも裏の肉離れが大きく減ったと報告されています。
ただしこの数字については「研究の選び方によって結論が変わる」という再検証も出ており、効果の大きさについては慎重に見るべきという指摘もあります。
それでも、週1〜3回・2〜3セット×6〜12回という手軽さを考えれば、取り組む価値は十分にあると考えています。
あわせて見直したいこと
■ 股関節と体幹|ここが硬い・弱いと、もも裏に負担が集中します
■ 走り方|同じ場所を繰り返す方は、走り方そのものに原因があることがあります
■ 練習量の管理|急に量を増やした時期に起こりやすいケガです
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10. よくあるご質問
Q. 痛みが引いたら、すぐ練習に戻っていいですか?
A. おすすめできません。痛みが消えることと、組織が元の強さを取り戻すことは別です。再発の多くは復帰直後に起こります。動きと力の左右差を確認したうえで戻るのが安全です。
Q. 湿布と痛み止めだけで様子を見てもいいですか?
A. 痛みは一時的に落ち着きます。ただし、動かすべき時期に動かさないと回復が遅れます。また痛みを消したまま動くと、無理をしていることに気づけません。
Q. ストレッチはしたほうがいいですか?
A. 時期によります。急性期に無理に伸ばすと悪化させます。回復期に入ってから、痛みが出ない範囲で行うのが基本です。始める時期はご相談ください。
Q. どのくらいで復帰できますか?
A. 痛めた場所と程度で大きく変わります。ももの真ん中あたりなら数週間、お尻に近い付着部の場合はその2倍以上かかることもあります。まず状態を確認させてください。
Q. 保険は使えますか?
A. スポーツ中の肉離れなど、原因がはっきりしている急性のケガは健康保険の対象となる場合があります。慢性的な症状や、予防目的のトレーニング指導は自費です。施術前にご説明します。
Q. 何度も同じところを痛めています。
A. もも裏だけの問題ではない可能性があります。股関節の動き、体幹の安定性、走り方まで含めて見直すことをおすすめします。当院では併設ジムと連携して、その部分までサポートしています。
Q. 部活を休みたくないのですが。
A. 痛む動作を避けながらできることは、たいていあります。上半身や体幹のトレーニング、下半身でも負担のかからない種目など。何もしない期間を長くしないことが、復帰後の差になります。
11. 和歌山市で肉離れの施術をお探しなら
和歌の浦 翔鍼灸接骨院は、和歌山市和歌浦南にある鍼灸接骨院です。柔道整復師・鍼灸師の国家資格をもつ院長が、施術からトレーニング指導まで一貫して担当します。
✔ スポーツ外傷・スポーツ障害に対応。少年野球から社会人まで
✔ 超音波療法(伊藤超短波 EU-910/LIPUS)と鍼灸を組み合わせた施術
✔ 併設のTitanium Fitness Gymと連携し、復帰後の体づくりまでサポート
✔ 部活動のスケジュールに合わせてご予約を調整します
✔ 駐車場完備。お車でお越しいただけます
対応エリア
和歌山市(和歌浦・新和歌浦・雑賀崎・紀三井寺・宮前・秋葉町・和歌山市駅周辺など)を中心に、海南市・岩出市・紀の川市・有田市方面からもご相談いただけます。
12. まとめ
✔ 最初の数日は守りながら、痛くない範囲で動かす
✔ 冷やし続ける・痛み止めに頼りきるのは、かえって回復を遅らせる可能性がある
✔ お尻に近い場所を痛めた場合は、復帰までの期間が大きく延びる
✔ 伸ばしながら鍛えるリハビリのほうが、復帰が早いという研究がある
✔ 復帰の判断は日数ではなく、何ができるかで行う
✔ 再発率の高いケガ。復帰後もトレーニングを続けることが最大の予防
「またやってしまうかもしれない」という不安を抱えたまま競技を続けるのは、つらいことです。痛みを取るだけで終わらせず、繰り返さない体をつくるところまで、一緒に取り組ませてください。
13. 参考文献
- Dubois B, Esculier JF. Soft-tissue injuries simply need PEACE and LOVE. Br J Sports Med. 2020;54(2):72-73.
- Askling CM, Tengvar M, Thorstensson A. Acute hamstring injuries in Swedish elite football: a prospective randomised controlled clinical trial comparing two rehabilitation protocols. Br J Sports Med. 2013;47(15):953-959.
- Askling CM, Tengvar M, Tarassova O, Thorstensson A. Acute hamstring injuries in Swedish elite sprinters and jumpers: a prospective randomised controlled clinical trial comparing two rehabilitation protocols. Br J Sports Med. 2014;48(7):532-539.
- van Dyk N, Behan FP, Whiteley R. Including the Nordic hamstring exercise in injury prevention programmes halves the rate of hamstring injuries: a systematic review and meta-analysis of 8459 athletes. Br J Sports Med. 2019;53(21):1362-1370.
- Impellizzeri FM, et al. Why methods matter in a meta-analysis: a reappraisal showed inconclusive injury preventive effect of Nordic hamstring exercise. J Clin Epidemiol. 2021;140:111-124.
この記事を書いた人|石川 翔(いしかわ しょう)
和歌の浦 翔鍼灸接骨院 院長/Titanium Fitness Gym 代表。柔道整復師・鍼灸師(ともに国家資格)。パーソナルトレーナーとして、プロゴルファーをはじめとする競技者のコンディショニングも担当。施術とトレーニングの両面からサポートしています。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療を保証するものではありません。回復の経過や感じ方には個人差があります。痛みが続く場合は、医療機関を受診してください。